ダイビングでは、浮輪や船のように水に浮く物体を「プラス浮力」、岩や鉄のように水に沈む物体を「マイナス浮力」と言います。ダイバーは水中で浮きも沈みもしない中性浮力で泳ぎます。
中性浮力で泳ぐためには経験や練習が必要です。中性浮力は上手になると、まるで宇宙飛行士のように無重力で空を飛んでいるように感じることができます。地形的なダイビングポイントや中層を泳ぐドリフトダイビングも楽しめるようになります。
逆に中性浮力が上手にならないと水底の珊瑚や魚の住処を破壊してしまう危険性があります。砂を巻き上げてしまい、周囲のダイバーに迷惑をかけてしまうかもしれません。
今回は中性浮力が必ず上手になる!絶対知っておきたい知識とコツ!を解説します。初心者ダイバーの方にはとても役に立つ内容です。長文の記事になりますが、中級者や上級者のダイバーの方も必ず参考になります。
又、国内のダイバーのほとんどが知らないような役に立つコツもあるのでダイバーの方はぜひ最後まで読んで下さい。
目次
当ショップではオープンウォーターの中性浮力を復習したいダイバーや期間が空いて不安なダイバーのためにリフレッシュダイビングのコースをご用意しています。是非、リクエストお待ちしています。
中性浮力に自信がない方や経験が少ない初心者の方も安心してファンダイビングが楽しめるようになります。
適正ウエイト
中性浮力には適正ウエイトがとても大事です。ウエイトが軽いと潜降することができないので、気が付くとオーバーウエイトになっていることがあります。(ウエイトが重たいのをオーバーウエイトと言います。)
適正ウエイトは全ての器材を装着して海に入り、BCDの空気を完全に抜いて、普通に呼吸をして、水面が目の高さの位置になるのが適正ウエイトになります。沈むときには息を吐き、肺の中の空気を空にして沈みます。
オーバーウエイトのまま気が付かないでダイビングしていると、BCDの給排気を余分にしなければいけないため中性浮力が難しくなります。又、ウエイトベルトを使用していると下半身が下がりやすくなり姿勢も悪くなります。
ウエイトの量はタンクの素材(スチール・アルミニウム)や容量によっても変わります。又、ウエットスーツの厚さや形状も影響してきます。ログブックを付けるときはタンクの素材や容量、ウエットスーツの厚さや形状も記入するようにしましょう。
又、アルミニウムのタンクは空気の量によって浮力が変化します。ダイビングの後半に空気が少なくなるとプラス浮力になります。その状態でも浮いてしまわないウエイト量が必要になります。
適正ウエイトでダイビングすると中性浮力がとても楽になります。こまめに確認するようにしましょう。
BCD(浮力調整具)の使い方
写真は、アクアラングのBCDです。国内のダイビングショップのレンタル器材で最も多い種類のBCDです。一般的なショルダーストラップタイプのBCDになります。レンタル器材はほとんどショルダーストラップタイプのBCDの場合が多いです。
ショルダーストラップタイプのBCDはレンタルで使いやすく、肩のショルダーストラップを緩めたり縮めたりすることでBCDのサイズが調節できます。サイズの幅が広いため、BCDの着脱も安易です。
BCDはぴったりと身体にフィットしていないとバランスを崩しやすくなり、中性浮力に影響が出る可能性があります。肩のショルダーストラップ、腹部のマジックテープ、腹部と首元のバックルをしっかりとめるようにしましょう。
又、腹部と首元のバックルはベルトの先を引っ張ると長さを調整できます。
パワーインフレーターの給気について
BCDにはパワーインフレーターのインフレーター(給気)ボタンを押して空気を入れます。写真のBCDはグレーのボタンがインフレーター(給気)ボタン、黒いボタンがデフレーター(排気)ボタンになります。
BCDがレンタルで毎回違うと間違う可能性があります。デフレーター(排気)ボタンは空気を抜きやすいようにパワーインフレーターの先端に付いています。インフレーター(給気)ボタンはデフレーター(排気)ボタンより上でホースに近い側に付いています。
エントリー前や水面ではインフレーター(給気)ボタンを長押ししてBCDに多めに空気を入れて浮力を確保します。水中では短くボタンを押します。実際に身体が浮いてくるのを感じるまでにタイムラグが数秒あります。
給気する量は深度ごとに変化します。例えば水深5Mで中性浮力の状態でも、同じ空気量のままでは水深10Mでは空気が圧縮されてマイナス浮力になります。深くなればなるほどBCDには給気が必要です。
ディープダイビングの場合などはインフレーター(給気)ボタンを長押しする場合もあります。
はじめたばかりの頃に間違えやすいのは、静止している状態で中性浮力を維持して、そのまま泳ぐと体の動きで水の抵抗が生まれ、プラス浮力になります。泳ぎ始める場合は排気を忘れないようにして下さい。
慣れるまでは泳いでいる間は中性浮力で静止するとゆっくりとフィン先が着底するぐらいがちょうど良いです。
BCD(浮力調整具)の排気について
パワーインフレーターのデフレーター(排気)ボタンを押してBCDの空気を抜きます。写真のBCDのデフレーター(排気)ボタンは黒いボタンです。一般的にBCDの空気を抜きやすいようにパワーインフレーターの先端に付いています。
インフレーター(給気)ボタンは押せば簡単に空気が入りますが、デフレーター(排気)ボタンの使用にはコツが必要です。BCDから空気が抜ける構造を理解することで排気が上手になります。
水中で泳いでいるときダイバーは水平姿勢を取り、水の抵抗を減らします。しかし、そのままの姿勢でデフレーター(排気)ボタンを押してもBCDの空気は背中に溜まったままで抜くことができません。
一度、身体を起こして、直立させてから、左の写真のようにホースを水面方向に真っすぐにして排気ボタンを押します。
重要なのは、BCDの空気の位置をイメージすることです。インフレーターホースの根本は左肩にあるので、身体を起こして左肩を少し上げると更に抜けやすくなります。
BCDにはパワーインフレーターのデフレーター(排気)ボタン以外にも空気を抜く方法があります。「ダンプバルブ」と呼ばれる排気バルブが右肩や右腰(後方)に付いています。パワーインフレーターの使用に慣れてきたらダンプバルブの方が抜きやすいです。
右肩のダンプバルブは身体を起こして、直立させてから、ダンプバルブのヒモ(プルボタン)を引っ張ると排気できます。右肩を少し上げると更に抜けやすくなります。
ヒモを引っ張ることによってダンプバルブが開き空気が抜けます。パワーインフレーターのようにホースを真っすぐにしなくても良いので少ない動作で抜くことができます。しかし、排気口を見て抜けた空気の量を確認することができません。
慣れてくると、空気が抜けた浮力の変化と排気されるときの音で分かるようになっていきます。
右腰(後方)のダンプバルブは水中で泳いでいるときの水平姿勢のまま空気を抜くことができます。頭が下の状態でも抜くことができます。一般的に右腰に付いている場合が多いですが、左腰に付いている場合もあります。
左右のダンプバルブが付いている側を少し上げると更に抜けやすくなります。腰(後方)のダンプバルブもBCDを装着している状態ではパワーインフレーターのように目で見て確認できません。手の平で背中からお尻に向けて辿ると見つけることができます。
肺の中の空気はウエイト数キロ分の空気量がある!?
中性浮力の大まかな調整はBCDの操作で行い、細かい微調整は肺の中の空気を使います。たくさん息を吸って肺の中に空気を溜めると2秒から3秒ぐらいのタイムラグがあり、身体が浮いてきます。
たくさん吐いて肺の中の空気を空にすると2秒から3秒ぐらいのタイムラグがあり、身体が沈んでいきます。
医学的には安静時に1回の呼吸で肺に出入りする空気の量を1回換気量と呼び、成人の平均値は約0.5L。息を吐いてから、最大で吐き出せる量が予備呼気量で約1L。逆に最大の吸入量が予備吸気量といって約2Lになります。
BCDに頼り過ぎないで、微調整は肺の中の空気を上手に使うようにしましょう。呼吸で調整する方が、BCDの操作よりはるかに動作が少なく浮いてしまう危険性も少ないです。
ダイブコンピューターばかり見てはいけない
中性浮力のためや深度コントロールのためにダイブコンピューターばかり見ていると周囲を確認できなくなる可能性があります。ダイブコンピュターで深度変化を0にすることはとても難しいです。
中性浮力を維持したい水深の景色を確認して目線の高さを合わせましょう。例えば水深5Mで安全停止のために中性浮力を維持して静止するのであれば、水深5Mの特徴のある岩などに目線の高さを合わせます。安全停止しているガイドを基準にしても良いです。
水平姿勢(ホリゾンタル・トリム)
ダイビングの理想の姿勢はホリゾンタル・トリムと呼ばれる「水平姿勢」です。簡単に例えるとスーパーマンに近い姿勢です。水平姿勢を保つことにより、水の抵抗を減らして、フィンキックも効率良く水を捉えることができるようになります。
国内では泳いでいるときは水平姿勢を意識しているダイバーが多いですが、静止するとほとんどのダイバーが足が下がり、直立してしまいます。泳いでいるときと静止しているときで姿勢が違うため、水の抵抗が生まれたり、BCDの空気の位置も動きます。
静止した状態で直立姿勢では潮の流れが速いエリアなどでは流されてしまいます。安全停止中も船から離されてしまいます。
静止するときに足が下がり、直立してしまうのには、日本人が好んで利用している器材が影響している場合が多いです。BCDはショルダーストラップタイプやスタビライジングタイプより、バックフロートタイプの方がはるかに水平姿勢を維持しやすいです。
ウエイトはウエイトベルトより、BCDのクイックリリースポケットの方が足が下がりにくいため、水平姿勢を保ちやすいです。又、タンクベルトにウエイトを付けたり、ウエイトベストを使用した方がさらに水平姿勢になります。
手は前方のほうが水平姿勢を保ちやすいです。フィンは長くて重たいフィンは水平姿勢が崩れます。フィン自体が中性浮力のタイプを利用するようにすると水平姿勢も安定して、中性浮力も保ちやすいです。
静止した状態での水平姿勢(ホリゾンタル・トリム)は国内のダイバーはほとんど意識していません。中級者や上級者のダイバーの方も試してみて下さい。静止状態で水平姿勢(ホリゾンタル・トリム)を維持できれば驚くほど快適に泳ぐことができます。
中性浮力が必ず上手になる!まとめ
中性浮力は上手になると、まるで宇宙飛行士のように無重力で空を飛んでいるように感じることができます。深度コントロールもできるようになり、地形的なダイビングポイントや中層を泳ぐ、ドリフトダイビングも楽しめるようになります。
逆に中性浮力が上手にならないと珊瑚や魚の住処を破壊してしまう危険性があります。砂を巻き上げてしまい、周囲のダイバーに迷惑をかけてしまうかもしれません。
中性浮力には適正ウエイトがとても大事です。オーバーウエイトのまま気が付かないでダイビングしていると、BCDの給排気を余分にしなければいけないため中性浮力が難しくなります。
ログブックを付けるときはウエイト量だけではなく、タンクの素材(スチール・アルミニウム)や容量、ウエットスーツの厚さや形状も記入するようにしましょう。
BCDはぴったりと身体にフィットしていないとバランスを崩しやすくなり、中性浮力に影響が出る可能性があります。肩のショルダーストラップ、腹部のマジックテープ、腹部と首元のバックルをしっかりとめるようにしましょう。
パワーインフレーターのインフレーター(給気)ボタンは水中では短くボタンを押します。実際に身体が浮いてくるのを感じるまでにタイムラグが数秒あります。あわてないで、確認しながらゆっくりと空気を足していきます。
給気する量は深度ごとに変化します。深くなればなるほどBCDには給気が必要です。
デフレーター(排気)ボタンは自動ではなく、押すことにより排気口の弁が開き、空気の通り道ができます。一度、身体を起こして、直立させてから、ホースを水面方向に真っすぐにして排気ボタンを押します。
排気するために重要なのは、BCDの空気の位置をイメージすることです。インフレーターホースの根本は左肩にあるので、身体を起こして左肩を少し上げると更に抜けやすくなります。
パワーインフレーターのデフレーター(排気)ボタン以外にも空気を抜く方法があります。一般的に「ダンプバルブ」と呼ばれる排気バルブが右肩や右腰(後方)に付いています。パワーインフレーターの使用に慣れてきたらダンプバルブの方が抜きやすいです。
中性浮力の微調整は肺の空気を使います。たくさん息を吸って肺の中に空気を溜めると2秒から3秒ぐらいのタイムラグがあり、身体が浮いてきます。たくさん吐いて肺の中の空気を空にすると2秒から3秒ぐらいのタイムラグがあり、身体が沈んでいきます。
中性浮力のためや深度コントロールのためにダイブコンピューターばかり見ていると周囲を確認できなくなる可能性があります。ダイブコンピュターで深度変化を0にすることはとても難しいです。
オープンウォーターの中性浮力の復習はリフレッシュダイビングのコースがおすすめです。さらに中性浮力が上手になりたい方はアドバンスや中性浮力のスペシャリティでも学ぶことが可能です。ぜひ、リクエストをお待ちしております。